「からすのパンやさん」小さい頃に一度は読んだことがあるのではないでしょうか?発行は1973年ですが、1995年には173刷もされています。ご存知のとおり世代を超えて読み継がれているベストセラー絵本です。
からすのパンやさんに4羽の赤ちゃんが産まれました。4羽は元気に育っていく一方で、子育てをしながらのパン屋経営は大変。そのためパンやさんはどんどん貧乏になっていきます…。
4羽の子どもたちのおやつは大体、焦げたパンや半焼きパンです。それを美味しそうに食べているところを見た他の子どもたちから口コミがどんどん広がっていき、パンやさんはたちまち大盛況に!
みんなに喜んでもらうために4羽の子どもたちも一緒にお店をお手伝いします。お客さんの希望にこたえるため、パンの種類を増やしたり、きれいにお店をお掃除したりすることで、森で評判のお店になりました。というお話。
もくじ
「からすのパンやさん」は、私だけでなく弟も大好きな絵本でした。保育園で働いている母に聞いても、子どもたちに読んであげると喜んでもらえる”はずれ”のない絵本だと言います。
なぜ、こんなに「からすのパンやさん」は小さい頃の私を含め、子どもの心をくすぐるのでしょうか?

それは、圧倒的なパンのイラストの多さだと思います。こんなにたくさんの可愛らしいパンのイラストが描かれていると、大人になった今でもわくわくしますよね?
小さい頃はこのページを見るのが楽しみで仕方なかったのです。弟がいるので、一緒に絵本を読む機会が多くありましたが、わかりやすく目をキラキラさせていたのを覚えています。
我が家の「からすのパンやさん」には、こちらのページに落書きがしてありました。犯人はおそらく弟です。あまりに種類豊富なパンのイラストを前に、つい数えたくなったのでしょう(笑)

※私が数えたら84こでしたw
「からすのパンやさん」の作者はかこさとしさんという超有名な絵本作家さんです。かこさんは、なんと東京大学工学部出身で、もともと化学系の会社の技術者だったそうです。そこから絵本作家に転身されたんですね。意外なキャリアチェンジかと思いきや、もともと子ども好きで紙芝居の活動などをされていたようです。
実は「からすのパンやさん」は、ソビエトの有名な舞踊団の演目の影響を受けているそうです。その作品に登場する老若男女の人物描写の豊かさが、からす1羽1羽の表情へ投影されているようです。影響を受けるもののレベルが高すぎて驚きますが…。
かこさんの講演を聞いた人によると、ユーモアたっぷりで遊び心に溢れた方だったみたいです。そんなお茶目心や好奇心が絵本にも表れていますよね。
大人になった今だからこそ感じたポイントが3つあります。
1.働きながら子育てすることの大変さがわりとリアル
チャーミングな「からす」で描かれているのでふわっとしていますが、わりと描写が現実的ですよね。子育てが手一杯でお店の経営がおろそかになってしまい、経営難に陥るという極端さはありますが、それだけ子育てと仕事の両立は大変なんだということを感じました。(子どもの頃は一切そんなこと思いませんでした。これが大人になったということなのでしょうか・・・)
2.お客さんに喜んでもらうサービスを追及することが大事だと商売の本質をついている
どんな仕事も誰かに喜んでもらうことが目的です。いわば仕事の本質は「人を助けること・喜ばせること」だと思っています。このからすのパンやさん一家は、それを実践しています。よい口コミがよい口コミを呼ぶという素晴らしい連鎖を起こしているのです。
一生懸命誰かを喜ばせようとする親の姿を見ることができる。これはすごくいい教育になりますよね。4羽の将来が楽しみ!と思っていたら、続編が出ていることを知りました。大人になった4羽の活躍が読めます!
3.家族一丸となってお客さんや社会のために貢献できるチームワークがすばらしい
お客さんを喜ばせるために4羽の子どもたちもお店のお手伝いをしています。(そのイラストがまた可愛い。)こんなに素直な子どもたちに育つだなんて、きっとお父さん・お母さんは大変ながらも愛情いっぱい4羽を育てたんだろうと想像しました。
山あり谷ありでも家族で一枚岩となって苦難を乗り越えていく。そして絆がうまれる。なんて理想的な家族の図なんだろうと、しみじみ思いました。
過去に絵本研究会という団体に所属し、現在は保育士を勤めている絵本の読み聞かせ方に関するプロ(母ですw)におすすめの読み聞かせ方を聞いてみました!
- たくさんのパンのイラストがでてくるページで「どんなパン食べたい?」などと子どもとコミュニケーションをとる。このページを楽しみにしていることが多いので、時間を多くとるのがおすすめとのこと。
- (特に小さい子向けですが)パンを食べるマネをしながら読んであげると、子どもは喜ぶそうです。一緒に楽しく読めるといいですね。
大人になって懐かしの絵本を読むと、当たり前かもしれませんがやはり違う視点がうまれますね。今後自分が親になったときには、「からすのパンやさん」でキャリア教育をしたいとも思いましたw(職業が人事系なのも影響しているかと思います)
実家で絵本を読みながら母と昔話をすることができたのもいい時間でした。ぜひ実家に眠っている懐かしの絵本があれば、家族と語りながら読み返すのもおすすめです。日々の疲れが少し癒されると思いますよ。
出典:「からすのパンやさん」 絵と文 かこさとし (偕成社)