日本の会社における採用活動といえば、新卒一括採用がメジャーですよね。転職が当たり前の風潮も出てきたとはいえ、新卒採用に注力している会社は依然たくさんあります。
私はこれまでベンチャー企業と大手企業で新卒採用に携わり、それぞれのいいところ・悪いところを肌で感じてきました。そこで今回は、その経験をもとに、就職・転職活動中の方向けに企業選びのヒントをお伝えしていこうと思います!
もくじ
まず、大手とベンチャーそれぞれどんな人が働いているのかお伝えします。※あくまでも私の主観となりますので、ご了承ください。
大手は協調性は高いが受身な人が多い印象
大手総合職に新卒で入社する人は、賢くて協調性が高い印象です。総合職では様々な部署を経験する前提から、頭脳だけでなく、コミュニケーション能力も重要な採用基準です。そのためか、いわゆる「変な人」に出会ったことはありません。少なくとも仕事で関わる大手の方は皆さん真面目で礼儀正しい印象です。
一方でマイナス面は、受身な人が多い印象です。よく言えば、言われたことをきっちりこなせるということですね。組織に所属しているからには、会社への貢献は必要なことですが、会社優先になってしまい顧客や社員など、会社を支える存在がおざなりにされる場合があるように感じます。
わかりやすい例が、か〇ぽ生命の不適切販売問題です。あれは会社の間違った指示や文化を鵜呑みにしすぎた職員が大量発生しておきた事故ではないでしょうか。顕在化していない同様の事故は、色々な会社で起きていると思います。
集団にのまれず、本質的に何が大切か判断することが重要です。
ベンチャーは良くも悪くも自ら動ける人が活躍している
※ここでいうベンチャーは社員数100人未満で拡大中のベンチャー企業をイメージしています。俗に言うメガベンチャーは含みません。
ベンチャーに新卒で入社する人は、将来の方向性が決まっている(大体は起業を考えている)人や、社長の想いに胸打たれた人(社長のファン)が多い印象です。
またベンチャーでは、入社してすぐに裁量をもてるケースも少なくありません。会社によっては、インターン時から現場業務に携わることができます。逆に言うと、研修制度が整っていません。そのため、自分から動ける人(指図されるのが嫌いな自由人タイプも含む)が多いように感じます。
一方でマイナス面は、井の中の蛙になりやすいところです。大手でも同じリスクはあるのですが、人事異動が活発に行われるので、少し回避できると思うんですね。東京の本社と鹿児島の支社ではもはや別会社です。
ベンチャーの社風は良くも悪くも「サークル」のようなところが多いです。男性が多いところでは「男子校」と言われることもあります。うまくハマれば居心地のいい組織になりうるということです。そこにハマれるのはラッキーなことですが、居心地のよさに甘えて何もしないままだと、向上心の強い他のメンバーにあっという間に差をつけられます。
ベンチャー企業には向上心が高い人が集まりやすいので、自ら外部に情報を取りに行くなどの学ぶ姿勢がないと、いつの日か居場所がなくなっているかもしれません。逆に現状に満足している人が多いベンチャーでは優秀な社員が見切りをつけて辞めてしまうので、会社自体が存続危機になるかもしれません。

学生さんと接している中でよく聞かれる質問が「ベンチャーと大手どちらがよいのか?」です。私は悩むなら大手に行っておけ派です。
なぜなら、ここで悩む時点で「自分軸」がまだ見つかっていないからです。ある程度やりたいことや、自分の価値観を把握している人はここで悩みません。それならサバイバーばかりの戦場に飛び込まなくても、大手企業でゆっくり育ててもらえばいいと思います。
ただ、ベンチャーをオススメしたい場合もあります。それは20代のうちに実家の家業を継ぐことや起業を決めている人です。ベンチャーの大きなメリットは経営者に近いことだと思うんですね。各部署同士も近いので、組織が回っていくことを体感することができます。
近い将来、組織を動かすことが決まっているのであれば、ベンチャーに飛び込むことを勧めます。(起業が30代以降であれば、大企業を挟むのもよいかと思います。大手ならではの人脈や高い視座などのうま味をもって起業することができると思います。)
大手の採用
大手企業の新卒採用では、まだまだ学歴社会の傾向が強いように感じます。というのも、SPIなどのウェブテストで高得点をとったり、面接での論理性を評価されて入社しているため、採用の仕組み上、学歴が高くなる傾向があります。
また学歴は一定のポテンシャルの担保にもなるんですよね。一定の学と教養が保証された学生の中から、自社の社風に合う学生を採用するのが大手の新卒採用です。学力も大事ですが、「熱意(志望度)」と「ストレス耐性」も重要です。面接に進んだ場合は、ぜひ意欲を伝えてください。
※余談ですが、適性検査には歴史があります。適性検査のもとになっているのは、587年に中国の王朝ではじまった官吏登用試験制度の「科挙」という制度と言われています。たくさんの候補者の中から優秀な人を採用するために一定の教養レベルを計るという考え方が1500年も前にも行われたと考えると奥が深いですね。
ベンチャーの採用
ベンチャー企業の新卒採用でも同様に選考がありますが、選考で見るポイントが少し違うように感じます。一番重要なポイントは社風との相性ではないでしょうか。優秀であっても、理念への共感度や会社の雰囲気・価値観に合わない人であれば採用されません。(オーバースペックとみなされることもあります。)
ベンチャー企業の最近のトレンドは長期インターンシップです。そこで優秀な学生を集めて、そのまま正社員登用するケースが少なくありません。学生にとっても社風や社員の人柄、職種との相性をしっかり判断することができ、お互いにミスマッチのない採用ができることが大きなメリットかと思います。
時間という工数はかかりますが、こういう相互理解のための長期インターンシップが増えれば、新卒のミスマッチ採用という悲劇がおこらずに済むのではないでしょうか。数日のグループワークではお互いに表面的な部分しか理解できないように思います。
採用活動は仲間集め
そして、会社の規模に関わらず社風というものがあります。例えば同じ日用品メーカーでも、おっとりした人が多い社風の会社もあれば、体育会でエネルギッシュな会社もあります。そこで採用担当者は、自社に適合できそうな人を採用しようとします。
大手とベンチャー、どちらにも言えることですが、基本的に採用活動とはビジョン達成のための仲間集めなのです。桃太郎でいうと、鬼を退治するという目的を達成するために猿・犬・キジを集めることです。キビ団子に惹かれるのか、桃太郎の強い使命感に共感するのか。どのような理由で桃太郎軍団に入るかは、極端な例ですが、企業選びと近いものがあると思いませんか?

大手企業に向いている人
まずは集団行動ができる人。また社会に与える影響を考えた上で、全体最適を考えられる人が向いているのではないでしょうか。
大手では1つの意思決定に、社内だけでもたくさんの人を巻き込む必要があります。これが取引先や顧客など社外にも広がると、より多くの人が関わってきます。そうなると白か黒で決断するのではなく、グレーゾーンである全体最適解を見つける必要があるんですね。
大手において、何か1つを決めるのにも時間がかかると言われる(実際本当のことが多いですが)のは、こういった影響力の大きさから判断に慎重になっていることも理由の1つかと思います。
ベンチャーに向いている人
世間の常識にとらわれない人が向いているように思います。あとは不確実なことに耐えられるメンタルがある人。
ベンチャーは会社のフェーズによりますがルーティンワークとは無縁だったりします。日々、マニュアルのない新しいことに挑戦していかないといけません。そんな時に世間の常識にとらわれてしまうと心が折れてしまう恐れがあります。正解が見えない中、突き進むには、常識にとらわれない強い信念が必要とも言えますね。
やりたいことや譲れない価値観があれば、ベンチャーに飛び込むのもいいかもしれません。ただ、ベンチャーは少数精鋭のため、労働環境がハードだったり、社風と合わなければ異動もできず、居心地最悪だったりしますので、見極めが重要です。
就活中の学生さんの中には「大手に行きなさいと親から言われるのですが、どう思いますか?」と言う方がいらっしゃいます。
こういう相談を受けるたびに「それは親御さんの価値観であって、あなたの価値観ではないですよね。あなたはどうしたいの?」と尋ねさせてもらっています。そうすると、「うーん・・・」と悩む方が多いんですよね。
自分の本音に蓋をして、周囲のモノサシで価値判断をしている方が、それだけ多いということです。子どもの頃に“自分の頭で考えて決断した経験”の差が就活時に出てしまいます。面接ではそこを聞くことが多いので。
今回は、私の経験をもとに大手とベンチャーの違いについて、述べましたが、これはほんの一例です。またどんな会社も一長一短です。その会社で働いている人の生の声をできるだけ多く聞いて、自分との相性を見ることが一番だと思います。
採用に協力してくれる(させられる)社員は、大体コミュニケーション能力抜群なエース社員が多いです。なので、新人や内定者がどんな人か聞いてみる(できれば話をさせてもらう)のも社風を知る手掛かりになるかもしれません。
この記事を読んでくださる方の大半は、キャリアに悩んでいらっしゃるのではないでしょうか。キャリアや生き方に正解はないので、悩んで当然だと思います。言い換えると、失敗もないと思います。選択したことを正解にしていく方が大切だと思っています。
私自身、転職活動を2回してキャリアを模索していますが、結果的に就活やキャリアで悩む若い方の相談役をさせてもらえています。あなたが悩んだことは、結果がどうであれ、いつか誰かの役に立つ日がきます。
この記事が、ご自身の価値観を考えるヒントに少しでもなると嬉しいです。